開発者ブログ : Rubicon におけるワープ加速度の変更

開発者ブログ : Rubicon におけるワープ加速度の変更 (Warp Drive Active - Warp Acceleration Changes With EVE Online: Rubicon)

(2013.11.15 15:24 by CCP Masterplan)


ワープ大好きっ子のみなさんこんにちは!

Rubicon でワープ加速度が変更されるわけだけど、今日はその裏側にある数学的なお話をしたいと思う (もちろんグラフあり。グラフなくして良い開発者ブログは成り立たないからね!)。Rubicon 拡張以降、ニューエデンをワープで駆け回るみんなの船の機動性に、大幅な変更が加わるんだ。

従来、僕らが船のワープ性能を調整したいと思っても、手段はかなり限られていた。まともにいじれる値は 「最高ワープ速度」 だけだったんだけど、後述のとおり、この値をいじっても速い船と遅い船の航行時間に大した差はでなかった。でも、艦船の調整もインターセプター (※要撃型フリゲート) ― まさに獲物に素早く食らいつくのを本来の使命としている船種だ ― にまでたどり着いたことだし、どうにかする必要があった。大型の (そして鈍足の) 船に乗った仲間達のためにターゲットを確保するのが高速タックラーやスカウトの役割なわけだけど、今回の変更によってその役割を十分にまっとうできるようになるはずだ。

まずはこのブログで取り上げる対象をはっきりさせておこう。このブログにおいてワープとは、船が最高速度の 75% に達し、目的地への軸あわせが大体完了して以降に起こる現象を指している。これ以前の段階では、船は 「ワープ」 しているのではなく、単に 「軸合わせ」 をしているだけだからね。「軸合わせ」 の段階における現象は今回の調整の影響を受けない。影響があるのはあくまでワープに入ってからの段階だけだ。


接敵せよ!

ワープは 3つのフェイズに分けられる。加速、巡航、そして減速だ。

  • 加速フェイズにおいては (名前が示しているとおり)、船の速度が最高ワープ速度にむけて上昇し続ける (単位は AU/秒)。
  • 最高ワープ速度に達すると、しばらくのあいだ巡航フェイズに入る。減速を開始するまでのあいだ、最高ワープ速度での巡航を続ける。
  • 減速フェイズは加速フェイズのほぼ間逆だ。速度が、ワープ巡航時のものから通常航行時の最高速度未満に達するまで、徐々に落ちていく。これの完了をもって船はワープ状態から脱し、すべてが常態にもどる。


以下のグラフで示されているのは、クルーザー (※巡洋艦) 級が 30 AU ワープを行った場合の各フェイズの様子だ。加速フェイズに約 9秒要し、巡航フェイズにも 9秒を要する (その間 3 AU/秒)。最後に、減速フェイズには 22秒近く費やす。どの船種でもパターン的にはこれと同じだけど、船種によって最高速度に差がある。



ゲーム的な観点、および技術的な制約 (おもにハムスターとナナイトの) から、EVE の加速モデルは現実世界の (あるいは、なにかお好みのものがあるのなら、そのシミュレーターの) ものとは異なっている。つまり、ニュートンの第 2法則には従わない。その代わりとして、EVE では加速時の動きを以下の 2つの計算式で表現している。

 x = e^(k.t)v = k.e^(k.t)

x (メートル) は t (秒) 時において航行した距離を表し、v (m/秒) は t 時における速度、そして k は定数だ (まあ、「定数的なもの」 かな。これについては後述)。

減速フェイズにおいても計算式は同様だけど、負の時間係数を用いる (および加速・巡航時に経過した時間・距離を相殺するオフセットも)。

では、k の値はどうなるのか。

旧ワープの場合、全船種において加速時 : k=3、減速時 k=-1 だった。太字は大事なところだよ。最高速度が何であるかにかかわらず、すべての船がまったく同じ割合で加速していたんだ。つまり、ワープと言えば大抵のものが上記とまったく同じカーブにそって行われていたということ。乗っているのがフレイターであるのか、インターセプターであるのかにかかわらずね。グラフをもうひとつあげて説明しよう。


ワープドライブ作動中

以下は、先ほどのクルーザーに今回はインターセプターも加えて、上掲とまったく同じワープをしているところだ。注目してほしいのは、インターセプターはクルーザーの 4.5倍の最高ワープ速度を誇っているにもかかわらず、ワープが完了するまでにかかる時間はクルーザーよりほんの数秒短いだけだということ。僕らが Rubicon で解決したかった問題が、まさにこれなんだ。

基本的に、速い船は遅い船に比べて長距離移動に秀でている必要がある。さもないと船種間の機動力の差に意味がなくなってしまう。




先ほど定数 k について述べたと思うけど、以下のように仕様を変更した。あらゆる船において、k はその船の最高ワープ速度の関数となった。これにより、最高ワープ速度が速ければ速いほど、その最高ワープ速度に達するまでの時間を短くすることができるようになったんだ。

加速フェイズにおいては、k は船の最高ワープ速度 (単位は AU/秒) と同値だ。

減速フェイズにおいては、k は船の最高ワープ速度を 3 で割った値となるけど、最大で 2 までとした。なぜこの制限が課されたかというと、そうでないときわめてワープ速度の速い船の場合、ワープからの減速があまりにも早すぎて 「何 AU も離れた地点でワープ中」 の状態から、「自船の真横でこちらにワープ妨害施行中」 の状態までの遷移が、サーバー・クライアントでまともに処理できる限度を超えてしまうからなんだ。


鬼速!

上記の 2船は Rubicon 以降以下のようになる。



インターセプターは最高ワープ速度が 13.5 AU/秒 から 8 AU/秒 に落とされているにもかかわらず、クルーザーの半分以下の時間でワープし終えているのがわかると思う。


Punch it!

船種ごとの加速度を調整するにあたって、今回は Tech 1 クルーザーを基準にバランスをとった。素の Tech 1 クルーザーに乗っている限り、パッチの前後でワープ速度に違いを感じることはない。クルーザーよりも高い最高ワープ速度をもつ船では加速が良くなったのを感じてもらえる (それゆえワープにかかる時間が大幅に減少するのも感じてもらえる) し、クルーザーよりも大きな船では加速が悪くなったのを感じてもらえる (それゆえワープにかかる時間も長くなる) はずだ。大きな船を遅くした割合よりも、小さな船を速くした割合の方が大きいので、結果的に全体の平均ワープ速度は上昇することになった。具体的に値については以下の表のとおりだ :



上記は各船種の素の状態での値なので、もっと速くしたければいくつか方法がある :

  • ハイパースパシャル速度オプティマイザー (Hyperspatial Velocity Optimizer) リグを装備することで、 CPU 出力を犠牲にして最高ワープ速度を上げることができる。
  • Tech 3 クルーザー (※戦略的巡洋艦) のサブシステムのなかには、ワープ速度にボーナスを得られるものがある。
  • インプラント ― Rubicon で実装されるゴーストサイト (※日本語版はこちら) に、なにやらお気に召していただけそうなものが・・・

フリートワープの仕様は以前と変わっていない。フリートワープ中の船のなかで一番遅い船の速度に合わせてすべての船がワープするので、軸合わせさえしてあれば全員同時に現地に到着するよ! また、アクセレレーションゲートを使用したワープについても、通常のワープと同じ加速仕様 (※つまり新しくなった加速仕様) にもとづいて作動するのは今までと変わらない。

これらは Singularity テストサーバーにはすでに実装済みなので、興味のある人はそちらへどうぞ。新しくなったワープを、そして Rubicon 全体を楽しんでもらえるといいな。

『1杯目はあのスターゲートに最後に着いたやつのおごりだからな!』

- CCP Masterplan と開発チーム Five O

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